測定環境のグレードアップ
中型3Wayスピーカの製作過程で測定が強力なツールであることがわかったので機材をそろえて再度測定してみました。 今回使用した機材は以下の通りです。
パソコンEpson Endevor NT6000
オーディオインタフェースEDIROL UA-25
コンデンサマイクBEHRINGER ECM8000
マイクケーブルバランス型(5m)
マイクスタンドK&M 25900
プリアンプ自作パッシブプリアンプ
パワーアンプ自作金田式
BEHRINGERのコンデンサマイクは無指向性で20Hzから20kHz程度まで ほぼフラットな特性を持っています。周波数特性の測定に最適です。 マイク等は購入しましたが、オーディオインタフェースだけは TANNOY使いの友人からお借りしました。 写真はマイクスタンド(上)、マイク(左下)、ケーブル(右下)です。 最初にノイズフロアのチェックから行います。 下図の通り、綺麗な1/fノイズが見られました。 UA-25のファンタムをoffにすると消えますのでマイクで拾っている環境雑音だと思います。 100Hz以下のデータは有効でないと思ったほうがよさそうです。
Eton 7-375/32HEXの周波数特性
ウーファユニットEton 7-375/32HEX単体の特性を示します。
前回の測定では正弦波をスイープして測定しました。 正弦波では部屋の影響を受けやすいので、今回の測定はホワイトノイズを用いました。 測定はダブルウーファの上側のウーファを用いました。 マイクは上側ウーファ軸上30cmのところにセットしました。 400〜2kHz程度までフラットです。4.5kHzの共振が一番振幅が高いです。 メーカーサイトにある周波数特性と同じ傾向です。 3kHz付近に谷があることまで一致しています。無響室で測定したわけでもないのに、 メーカーの測定結果と近いデータが得られたことに驚きました。 今回の測定では8kHzに弱い共振が、12kHz付近に鋭い共振が見られます。 確かにメーカーの測定でも8kHzと10kHzに弱い共振があります。 12kHzの共振はどうやら10kHzの共振がずれたもののようです。 ずれただけならいいですがレベルが上昇しているのが気になります。 何故でしょう? 理由はわかりませんが、 これらのピークをなるべく押さえることがネットワーク設計のカギになると思います。
Thiel & Partner (Accuton) C2-12/6の周波数特性
同様にトゥイータユニットThiel&Partner C2-12/6(C25-6-12)も軸上30cmの周波数特性を測定しました。
トゥイータ保護のために10uFの容量を直列に接続した状態で測定しています。 カットオフ周波数は3kHz程度です。 もっと大きな容量を使えばもう少し低い周波数まで測定できると思います。 ということで参考程度に見てもらえればと思います。 15kHz以上でレベルが減衰しています。 それ以外は3kHz以上でおおむねフラットな特性となっています。 15kHz以上の減衰については、この測定環境の測定限界なのか、 スピーカの問題なのかは今のところ分離できていません。
2wayネットワークの改良
以上の測定結果をもとに、ネットワークの再設計をすることにしました。 ローパスフィルタはウーファユニットの共振レベルをなるべく下げるために 2次のフィルタを使うことにしました。 2次のローパスフィルタではカットオフ周波数以上のレベルは20dB/decで減衰します。 1次のローパスフィルタを使う場合でも、 ウーファのインピーダンス補正が必要なので部品数(コスト)は1次でも2次でもそれほど変わりません。
トゥイータユニットは目だった共振がないので インピーダンス補正なしで1次のハイパスフィルタを用いました。 容量1個のシンプルな構成でさわやかな音を狙います。 手持ちの部品を組み合わせることで、ネットワークは以下のようになりました。
定数は測定と試聴を繰り返しながら決めました。
2Wayの周波数特性
上記の条件で測定を行いました。 マイクはリスニングポイントに置いた状態で測定しました。 スピーカとマイクの直線距離は約1.8m、マイクはスピーカの正面軸から30度程はずれた状態です。 tweeter(赤)とwoofer(青)それぞれの特性を示します。
ウーファの4.5kHzのピークは十数dB減衰しています。 さらに8kHz、12kHzのピークは30dB以上減衰しています。 トゥイータとウーファのクロスは2.5kHzくらいです。 トゥイータのレベルは少し控えめにしてあります。
全体での周波数特性を示します。青線はノイズフロアです。
ネットワークを見直したことで最初の測定で見られた2〜3kHzの谷を消すことが出来ました。 これは2次ローパスフィルタの容量を少し大きめに設定することで実現しました。 周波数特性は150Hz付近の山と400Hz付近の谷が残ってしまいました。 しかし、それ以外は周波数特性に大きな山谷はみられず、 1〜2kHzを中心にゆるやかなかまぼこ型になっています。
測定はあいかわらずキャリブレーションなしで行っています。 それでも難関のネットワーク調整が比較的短時間で追い込めます。 今後はかまぼこ型の特性をもう少しフラットに微調整したいと思います。
試聴
以前見られた2〜3kHzの谷が消えたことが音にもはっきり現れています。 明瞭度が大幅にアップしました。音の通りがよくなったように感じます。 さらに、2次のローパスフィルタによりウーファの4.5kHz、8kHz、12kHzの共振が抑えられたため、 トゥイータの音色が綺麗に響きます。 トゥイータの特徴がよく出て、バイオリンやギターといった弦楽器が楽しく聴けます。 トゥイータのレベル調整が1Ωで済んでいるのも好結果に繋がっているのでしょう。 この抵抗が大きいとトゥイータの音がボケる傾向があります。 全体にとても上品な音色です。低音はダブルウーファなので豊かにに鳴ります。 密閉式の締まった音は適度に弾力があるようで私には好ましいです。 ポップスのドラム等でわずかにきつく感じる場合もありますが、 チェロなどの弦楽器の低音には密閉式は心地よいと感じます。
ウーファの4.5kHzの共振を抑制するためにクロスオーバ周波数を低め(2.5kHz)に設定しました。 そのため、中高音はトゥイータの音色が支配的になっているようです。 C2-12は弦楽器の音色は大変綺麗なのですが、音は全体的にすっきりしていて ボーカルの力強さなどが再現しにくい傾向があります。 C2-12にはクロスオーバ周波数が少し低いようです。 できればもう少しクロスオーバ周波数を高めに設定できると、 ボーカルへの対応力が増すように思います。 また、厳しく聴くと時にサシスセソが気になってしまうことがあります。
定位は良好です。一方で、広がりも結構感じます。 そのせいか音像は以前より大きくなったと感じます。 ネットワークを2次に変更したことが効いているのかもしれません。
Tweeter位置調整
ボーカルなどを聴いているとサシスセソが気になります。 トゥイータとウーファのクロスが上手くいっていないように感じられます。 周波数特性は極端に乱れていません。そこでネットワークはそのままに トゥイータの位置調整をすることにしました。
トゥイータとウーファから出た音はリスニングルームで重ね合わさってひとつの音に合成されます。 ですから、トゥイータとウーファの位置関係は最終的な音質に多大な影響を与えます。 B&Wノーチラスシリーズが行っているようにトゥイータの位置の最適化を行いました。 階段型の音源位置調整はTechnicsやKEFのほうがB&Wより先に取り入れたのだそうです。
トゥイータは1次ハイパスフィルタ、ウーファは2次ローパスフィルタです。 大雑把ですが、クロスオーバー周波数ではトゥイータが+45度、ウーファが-90度となります。 周波数特性のグラフをみるとクロスオーバー周波数付近では+6dBを目指せばよさそうなので 完全に同位相で加算するとよいということになります。 トゥイータを135度(約5.3cm)後ろに下げるとよさそうです。 一方、トゥイータとウーファには2cm程度の音源位置の差があります。 ですから、3cm程度後ろに下げるとちょうどいい結果が得られるのではないでしょうか?
トゥイータを前後させて試聴すると、 トゥイータが前に来るほど解像度は上がりますが、サシスセソが強調される傾向があります。 試聴を繰り返した結果、 トゥイータをウーファから25mm後ろに下げた状態がベストという結論に至りました。 この状態でボーカルはほぼ満足いく結果が得られるようになりました。 ピアノやバイオリンの響きもとてもいい具合です。
内振り角度調整
スピーカの内振り角度はステレオ再生の定位と広がりを決める重要なパラメータです。 よく家電量販店で見かける左右スピーカを平行に配置する方法は音の広がりが得やすい配置です。 音の奥行きが出やすい配置でもありますのでクラシック向きの配置です。 欠点はスピーカ間隔を広げたときの定位が悪化する、 指向性が強いスピーカだとリスニングポイントで周波数特性が乱れる等があります。
この対極にある設置方法として、左右スピーカをリスナーに向ける方法があります。 定位がよい一方で音の広がりが得られにくいようです。 音が迫ってくる雰囲気があるのでジャズ、ポップス向きのセッティングと言われています。 スピーカ間隔を広げても定位が悪化しにくく、 指向性が強いスピーカだとリスニングポイントで周波数特性が乱れにくい傾向があります。
定位と音の広がりのバランスを考えながら、 スピーカを10度強内側に向けた配置に変更しました。 若干ですが、定位が改善しました。室内楽などが安心して聴けるようになりました。 さらに定位をよくするためには床とリスニングポイント右側の壁の反射を削減する必要がありそうです。 敷布団やら洋服やらといった吸音性の素材を総動員してこれらの反射を押さえ込むと奥行き感や定位は確実に向上します。 オーケストラの奥行き感も出てきますし、残響も自然になります。 音に囲まれる雰囲気がでます。 しかし、いくら音響のためとは言え、部屋をみっともない状態にするのは避けたいところです。 ということで、部屋の雰囲気を壊さないような音響対策ができるまでは音響対策なしで我慢です。
吸音材調整
密閉箱内部の吸音材の量は多ければいいというものではなさそうです。 何度か調整して、中低音のにごりと力感(?)のバランスのよさそうなところで手を打ちました。 一般的に言われる吸音材の最適量より少し多いくらいで落ち着いています。
まとめ
クロスオーバネットワークの改良により音質向上が得られました。 今回の経験からスピーカを生かすも殺すもネットワーク次第だなと思いました。 ついでに、トゥイータ位置調整、内振り角度調整、吸音材調整もして音質を追い込みました。 この間、外観はちっとも進歩していませんが、音質は大幅に向上しました。 今の状態では少し線が細めですが、全体に聴きやすくて上品な音にまとまったと思います。 3Wayに発展させるのを忘れてしまいそうな程に満足度が高いです。