Woofer Boxの構想
まずは箱の種類を決めなくてはなりません。スピーカ自作でメジャーな箱の 種類として考えられるのは、密閉、バスレフ、後面開放、バックロードホーン、 トランスミッションライン等です。 狭い部屋でも使いやすいという意味で実用的なのは、密閉式かバスレフ式だと思います。 私が認識している両者の特徴は以下のとおりです。
バスレフ式
ポートから放射される低音の位相が周波数によって変化するので音の合成が難しい。
バスレフポートからの音漏れが音をにごらせがち。
共振周波数以下は18dB/octで減衰する。最低域では相対的に音量が下がりやすい。
密閉式
低音を伸ばしにくいが、嫌な音が出にくく、設計通りの特性が得やすい。
共振周波数以下は12dB/octとバスレフと比較するとゆるやかに減衰する。
最低域まで相対的に音量を保ちやすい。
ここは音圧は控えめでも低い周波数まで伸びる密閉式を選択しようと思います。 バスレフ式と比較すると密閉式のほうがクラシック向けなのではないかと思います。 測定器がなくても狙った特性を得やすい密閉式を選択しよういうことも 決定を後押ししていたということは否定できません。
Woofer Boxの設計
密閉式で決めなければいけないパラメータは以下の通りです。
内容積
内容積は低域のカットオフ周波数、トータルQ値に影響します。 密閉箱の場合、カットオフ周波数、トータルQ値は、一定の関係式を持ち独立に決められません。 設計の自由度は低いといえます。 なお、実効的な内容積は吸音材の量が増えるほど大きくなります。 また、ボイスコイルの発熱による抵抗変化が原因で、 Q値は入力パワーが大きくなるほど大きくなる傾向があります。 スピーカに最適音量があるのはこのためだと思われます。
吸音材
実効内容積に影響します。箱内部の不要輻射を抑える役割と、 実効内容積を増加させる役割のふたつが存在します。 グラスファイバ(R19)を100%詰めると15-25%程度の容積増と同等の効果が得られるそうです。 (理論値では実効内容積40%増が得られる計算になるが、実際はそこまで得られないらしいとのことです。) グラスファイバは健康によくないので使いたくないと思い、 今回は代替品として東京防音のホワイト・キューオンを使うことにしました。
BOX構造
Woofer boxとtweeter+midrange boxの2ピース構成を予定しています。 Woofer boxはダブルウーハを縦に配置しトールボーイ風の外観を目指します。 縦長箱特有の音の干渉を避けるためにダブルウーハの上下それぞれのユニットに独立のチャンバを与えます。 真中の仕切りは斜めに入れます。 Tweeter+midrange boxはデザインを練っている最中です。 Woofer boxの時のデザインの決まりかたを鑑みると、 最終的に何の工夫もない形に落ち着くと思います。
UNIT配置
2つのウーハユニットが離れると、音源が分散してしまうので、 ウーハユニットはwoofer box上部に集中的に配置しました。 ウーハが集中しているほうが外観もスマートになると思っています。 メーカー製スピーカでダブルウーハを採用する場合もなるべく近接配置している例が多いようです。 音源の距離は約30cmとすれば、DC〜1kHzの範囲で波長より音源の距離が小さくなるため (上手に設計すれば)ひとつのウーハーとほぼ同じ解像度が得られると思われます。
以上のように大まかな方針が決まりました。次は箱の寸法を決めます。 以前の実験から、箱のトータルQ値は0.58より0.65の方が 私の好みに近い低音が得られるという結果が得られています。 そこで今回はトータルQ値0.65をターゲットとしました。 ユニットのT/Sパラメータを用いて計算すると、 トータルQ値0.65が得られる密閉箱の内容積は1ユニットあたり9リットルでした。 (2ユニットでは倍の内容積になります。)このときの共振周波数は約76Hzになります。 ここから下の周波数ではレベルがだらだらと下がってしまいます。
箱の大きさは W 22.0cm x H 57.0cm x D 34.0cmとしました。 内容積は9.2リットル/チャンバになりました。 また、計算上のトータルQは0.64になりました。 板厚はフロントバフルのみ60mmで、その他は30mmにしました。 最終的に以下のような形になりました。
Woofer Boxの製作
板材はMDFを使い、カバ材の突き板を張ることにしました。 カバ材は桜材とよく似ています。 業界では、カバ桜と呼ばれたり、桜材として扱われることもあるそうです。 板材の調達およびカットは、工房 木よう大工様にお願いしました。 30mmのMDF板からカットしていただき、 フロントバッフルのみプレス機で2枚を圧着して60mmにしていただきました。 板材はドン付けではなくホゾを切っていただきました。 ユニット取り付け用の穴あけもお願いしました。 工作の手順は以下のようになります。
仮組み
仮組みをして加工ミス等の問題がないか、 きちんと直角が出ているか等を確かめます。
接着
1〜2箇所ずつのペースで接着していきます。 MDFは芯材となるだけなので接着剤がはみ出ても気になりませんから、 接着剤はたっぷりと塗ります。 接着剤が乾かないうちにハタガネでぐいぐい締め付けます。 念のために端材であて木をしました。締め付ける際に接着剤がはみ出てきます。 はみ出た接着剤は皮すきですくうと処理が楽です。 いらない定規などでも代用できます。 接着剤は一般的に使われている木工用ボンドではなくて、 フランクリン社のタイトボンドと呼ばれるものを利用しました。 タイトボンドは固着後の硬度が高いことが特徴です。
切削
接着工程でずれが生じることがあります。 また、接着材によってMDFはわずかに伸びるようですから、 どうしても板の接合部分にずれが出てしまいます。 このまま突き板を貼ると、ずれた部分で浮きが生じてしまいます。 ですから、オービタルサンダーを使って凸凹をなくします。力技です。 電動工具の威力は絶大で、数時間で2本分の切削が完了しました。
突き板
工房 木よう大工では、0.6mm厚と比較的厚い突き板を扱っています。 突き板は厚いほうが扱いやすいので扱いは比較的楽でした。 しかし、残念ながら突き板の幅が20cm弱しかなくて今回のwoofer boxのサイズには小さすぎます。 そこで、2枚もしくは3枚を横に並べて張り合わせることで、幅の広い1枚の突き板を得ることに挑戦しました。 突き板の種類にもよりますが、 丁寧にヤスリがけすればどこで接着されているのかほとんどわからなくなります。
突き板(張り合わせ)
まず最初に色の近い突き板を探します。 そして張り合わせる部分を正確に真っ直ぐカットします。 金尺を突き板にクランプで固定してカッターで真っ直ぐに切ると比較的正確にまっすぐが得られます。 真っ直ぐに切った突き板同士を横に並べてマスキングテープで固定します。 このとき、なるべく隙間がすくなくなるように固定します。 次に、張り合わせる断面に接着剤を塗ります。 マスキングテープのところで二つに折れば、張り合わせる断面が現れます。 現れた断面に接着剤を塗って二つ折りを元の状態に戻せば自然と2枚の板の断面同士が接着されます。 ただし、多少ずれるのでなるべく段差が小さくなるように微調整が必要です。 張り合わせるときに接着剤がはみ出してくるので皮すきで接着剤を取り除きます。 濡れ雑巾で拭くとせっかく出した直線が歪みますから濡れ雑巾は使うのはご法度なのだそうです。
突き板(接着)
接着したい面より少し大きめの突き板を用意します。 アイロンを暖めてスタンバイさせておきます。設定はなるべく高温がよいそうです。 私は中くらいの温度設定を使いました。 アイロンの温度が十分高くなったら箱に接着剤を塗ります。 接着剤を塗り過ぎると突きいたが水分を吸って伸びてしまいます。 固着中に板が延びると浮きや割れの原因となりますので必要最低限だけ塗ります。 天板のような小さな面ではさほどシビアではないのですが、 側板のような大きな面では板の伸びがひどいですから特に注意が必要のようです。 接着剤を塗り、突き板をセットしたらアイロンでぐいぐい押し付けます。 アイロンがけは真ん中からだんだん周辺に広げていきます。 ゴム系の接着剤を使って固定すると板の伸びがないので楽なのだそうです。 接着が完了したら突き板のはみ出している部分をカッターで丁寧に切り取って完了です。
以上、ご参考になればと思い掲載しました。ついでに、使用した工具の一覧も載せておきます。
使用した工具
ハタガネ大6つ
ハタガネ小3つ
タイトボンド260g 2本
マスキングテープ2本
金やすり1本
紙やすり不明
オービタルサンダー日立工機 FSV 10SA
半田ごて大洋電機産業 KS-100R (100W)
のこぎり
カッター
ドライバー
ラジオペンチ
ニッパー
きり
皮すき
金尺シンワ 600mm 13021
直角定規シンワ 完全スコヤ15cm 62009
アイロン
あて木端材
吸音材は一般的なグラスウールでなく東京防音のホワイト・キューオン(ESW-415)を使いました。 ホワイト・キューオンの密度は30kg/m^3です。片チャンネルあたり1枚(415x910x50mm)使いました。 この製品はペットボトルから製造したエコマーク認定品というところが気に入りました。 オーディオ自作は一品モノの手作りが中心ですから、材料に無駄が出たり、 目の前の一品を作り上げるがためだけに大きな工具を購入したりします。 なんと贅沢な趣味でしょう。自作の悦びのために生じる環境負荷は結構なものだと思います。 ですから、エコマーク認定品を選ぶのはせめてもの罪滅ぼしだと思っています。
完成して部屋に置かれている姿は結構存在感があります。 なぜか作っているときより大きく感じます。Wooferの黒が目立つからでしょう。

Woofer Box単体試聴
まずは、アンプ直結のフルレンジとして試聴してみました。 7インチダブルなので低音がしっかり出てくれます。 Wooferの口径が4.5インチシングルの時は低音を倍音で巧みに演出していましたが、 それとは違い基本波までしっかり出ているようです。これはピアノも楽しく聴けそうです。
しかし、Wooferをフルレンジとして使うのはさすがに無理があるらしく、 高音はガサガサで繊細さがありません。同じフルレンジでもシングルで使うと かなりベターになるのではないかと思います。量感が増えた低音についても、 その音質が固くて響きが不足していると感じます。 Q値が低すぎる音と同じような傾向と感じました。
総じて量は増えたけど、質は今一歩といったところが最初の印象です。 これだけの投資をしてこの音はもしや…失敗!?と冷や汗気味でした。 ところが、1時間くらい鳴らし続けていたら徐々に音がなめらかになってきました。 低域はやわらかくなってきて、高域も滑らかに聞こえるようになって来ました。 クラシックの弦楽器の音が徐々に綺麗に聞こえるようになって響きも豊かになりました。 エージングにより印象はぐっと好印象へと変わりました。
最初はwoofer boxを床に直置きして聴いていましたが、 低音の量感が少し多すぎると感じました。 もともと、小型スピーカに親しんできたので低音は控えめな方が好みなのです。 低音の量感は壁や床との距離をコントロールすることで調整可能です。 低音は床や壁で反射するので、量感をあげたかったら近づけます。 量感を下げたかったら遠ざけます。壁との距離を調節し、 さらに木片をスペーサとして30mm程浮かせることにしました。
セッティングで低音の量感が好みに近づきました。 また、床の影響を受けにくくなったようで、音が全体的にクリアになりました。 この状態で聴くと、チェロもピアノもふわりと軽く漂ってくる低音といった印象です。 Wooferが低歪みだからこうなるのだと思います。 ひずみ率を重視してユニットを選んだのは正解だったと思います。 ティンパニやドラムの音も結構リアルで嬉しくなってしまいます。 ドラムの音を聞いているとやはり密閉型の締まった音です。 トータルQ値は設計値より少し低めに出ているかもしれません。
アルミドームは嫌な共振による色づけも少ないようで、高域は思いのほか綺麗です。 アルミドームに透明な塗料を塗ってダンプしてあるのが効果的なのだと思います。 ずっと前に使っていたアルミドームのスピーカのような嫌な音は出ません。 とはいえ、Tweeterやmidrangeなしでも十分とはいえません。 シンバルの音など可哀想なことになっています。 分析的に聴けばそうなのですが、BGMとして流していると、 ついつい聴き入ってしまったりします。 低音がしっかりしているせいか結構楽しく聴いている自分がいます。
定位は安定しています。ただ、奥行き感はそれなりです。 これは小型2Wayの時から相変わらずなので、 アンプの方の問題が大きいのかもしれません。 もしかしたら、パッシブアッテネータのクロストークが悪いのが原因かもしれません。 また、スピーカのセッティングや部屋の問題もあるかもしれません。
今後は測定データで確認しながら、スピーカと床との距離、スピーカと壁との距離、 左右のスピーカの間隔等を詰めていく必要がありそうです。 ようやくオーディオの出発点に立った気分です。
リンク
工房 木よう大工
東京防音